工房草來舎について

工房草來舎は夫婦二人の小さな焼き物工房です。
信州伊那谷の南端泰阜(やすおか)村に登り窯を築き、薪窯による「焼締自然釉」や、天然の「灰釉」を中心に、日々の暮らしを彩る器を作っています。
泰阜村は天竜川が深い谷を刻む急峻な山里。厳しくも豊かな自然が残り、その自然と向き合って生き続けてきた人々の暮らしの知恵と技術が残る場所です。私たちはその自然の恵みに支えられながら、泰阜ならではの作陶を心掛けています。
●土●
信州は、残念ながらあまり焼き物の土には恵まれていません。 草來舎では、器に応じて各地の土を厳選して用いています。 僅かながら採れる泰阜の土は、手強い個性があり多くの作品には使えません。 しかし焼き方や釉薬との組み合わせよっては、思いがけないほど豊かな表情が生まれます。
●釉薬●
泰阜村は焼き物の土はあまり採れませんが、釉薬の原料になる草木は豊富な場所です。
草來舎は古来と変わらない技法で、草木の灰から釉薬を仕立てています。
信州特産の林檎の木、田んぼの藁、登り窯の薪の赤松、楢など。
いずれも循環型の山里の暮らしの中で、四季折々に得られるものばかりです。
その灰に地元の長石を合わせ、人工物は一切加えない「灰釉」は、静かで美しい色を湛えています。
また、作品に釉薬をかけずに登り窯に入れ、燃料である赤松の薪の灰が十分に作品に降りかかって自然に釉薬状になる「焼締自然釉」の豪快な味わいは、二つと同じ物ができない薪の窯の醍醐味
です。
●焼成・登り窯●
草來舎では泰阜村の森の恵みを生かし、主に薪の窯で作品を焼いています。
今では珍しくなった「登り窯」を自ら築窯し、燃料は赤松のみ。
その赤松は、地元の山を除間伐して得ています。
登り窯の窯焚きは3日間の長丁場。労力は掛かりますが、丁寧に仕立てた灰釉の良さを最大限に引き出すには、やはり薪の窯に勝るものはありません。
また、焼締自然釉は、薪の窯でしか得られない貴重なものです。
●自然の力が生きた器●
本来、人の暮らしでは、生活の糧である地域の自然を守り、自分たちが暮らす地域のモノを使い、自分たちの手で必要なモノを生み出してきました。
焼き物は、ものづくりの中でも、人の暮らしに最も直結しています。 私たちが毎日の食事で使う器は、ほとんどが焼き物。 焼き物の材料は土。薪は森。そして炎を操ってしまうのが人間。 焼き物を作ることは、土、森、火などの人の暮らしのもっとも素朴で根源的な部分と深く関わっています。 人の生活の歴史や文化が、作陶を通して見えてきます。
私たち工房草來舎は、泰阜村の「自然と共にある暮らし」を知る先達に学びながら、作品に自然の恵みを生かすよう、なるべく昔ながらの素朴な技法を用いて手間を惜しまず、自然に負荷を掛けず、その循環の中での作陶を心がけています。
素材から力が引き出されてくる、泰阜村の自然の恵み。それが作陶の原点です。
●プロフィール●
大越慶
1960年 福島県生まれ
1986年 武蔵野美術大学彫刻科卒。同年長野県泰阜村へ。グリーンウッド自然体験教育センターで研究員として働きながら陶芸を独学
1991年 工房草來舎設立
1992年 連房式登り窯築窯
2004年 穴窯築窯 林業士資格取得
2009年 中日教育賞受賞(地域の風土と文化に根ざした「ものづくり教育」)
●作陶で心がけていること:自然の素材を生かし、シンプルで、長く使える道具としての器作り
●好きなもの・好きなこと:手仕事・料理・小刀などの手に近い道具・研ぎ・JAZZ・山登り・読書・山仕事
●暮らしの楽しみ:焼き物は森の恵みに支えられている。近所の山から窯焚きの薪を伐らせてもらいながら、森の仕組みや、山で暮らす作法を学びました。自然と共にあった人の暮らしが面白い毎日。
丸山葉子
1964年 東京都生まれ
1988年 武蔵野美術大学陶磁科卒
1991年 結婚を機に泰阜村に移り住む。大越と工房草來舎設立
1992年 連房式登り窯築窯
2004年 穴窯築窯
2009年 中日教育賞受賞(地域の風土と文化に根ざした「ものづくり教育」)
●作陶で心がけていること:表面の面白さや美しさではなく「焼き」が強いこと。質実であること。
●好きなもの・好きなこと:手仕事・料理・映画・旅・山登り・休みには家族で海鮮三昧キャンプに行くのが楽しみ。
●暮らしの楽しみ:都会っ子だった(?)私が山里に暮らして30年。都会にいては分からない、人の営みや今の社会の姿が、ここからは垣間見える。近所のイカしたおじいま、おばあまの、人生の機微に触れるのが活力のもと。